掃き溜め

快楽主義の依存体質が破滅していく道程

ハッテン場に行ってきたよ

 ぼくがソープで童貞捨てて一年余り、周りがドン引き必至のー罪ーを犯すことになってしまった。それはすなわち処女の喪失。行きずりの男に抱かれた経験である。今回はそんな一部始終をお届けしたいと思う。

 

ぼくの心の中にはいつも虚無感が太陽を覆う雨雲のようにあることを自覚していた。どれだけ愛しても報われず、愛されることはないだろうという諦観、どれだけ努力しても上には上がいて、最後には死という形で無に帰すであろうというやるせなさ。

 もしも、少しでもありのままの自分が愛されたのならば……そんな心の中に存在し、いつまでも飼いならせない虚しさが和らぐのではないか?そう思ううちにいつしか男性に抱かれ、愛を一心に受けることを夢見るようになっていた。

 

 こんな思いから、足がいつの間にかハッテン場という男たちが愛を育む場に向いていた。

 おそらく読者の大半はハッテン場と聞くと夜の公園、夜の銭湯あるいは「くそみそテクニック」よろしく公衆便所などを想像するかもしれない。しかしながら、世の中には有料発展場と呼ばれる男性同士のハッテンを目的とした場所を提供する施設が存在する。ぼくが赴いたのはその有料発展場である。想像される発展場よりもずっと清潔で、シャワールームや出会いの場、デキた二人が愛を育むための個室などがあり、個室にはローションやコンドームが備え付けられている。施設使用料さえ払えばローションやコンドーム、シャワーを浴びる際のタオルなどを自由に使うことができる。

 駅から歩いて数分、雑居ビルの上のほうに入っている発展場に足を踏み入れる。すると、入ってすぐのところに料金を支払うための受付がある。風俗に行ったことがある読者であれば、ピンクサロンの受付のようだといえば伝わるだろうか。完全先払いという点でも店舗型の風俗店に通じるものがある。受付の左側には「手隠し」と書かれたポップが掲げられている。これはドレスコードであり、「施設内では全裸で股間を手で隠して行動してくださいね」という意味である。料金は1000円前後で、時間や年齢、体を鍛えているかなどに応じて様々な割引を受けることができる。風俗店に比べると破格の安さであるが、風俗と決定的に違うところは自分で相手を見つけなくてはならないという点であり、店はあくまでヤリモクのゲイにナンパする場所を提供しているに過ぎない。したがって、相手が見つかるかどうかは運、それと自分のアピール次第である。

 

 料金を支払ってロッカーに荷物と衣服をしまい、シャワーに向かう。眼鏡は外したほうがキマるかなと思い外した。人の利用客とすれ違ったが、この時点では温泉かなにかとあまり変わらない。違うとすれば、年ごろが同じくらいあるいは少し年上くらいの男性ばかりという点である。シャワーを浴び、周りが向かう場所に行ってみる。中は暗くてEDMがズンズンと掛かっている。周りが気にならないような配慮もまるでピンサロである。中は入り組んでいて、迷いそうになるが、その一角にマットレスが敷かれ、男たちが数人寝転がっている区画があったので、そこに寝転がってどのようにカップルができていくのかを見てみることにした。

 ぼくはこういうところはもちろん初めてで、客層も(男に興味がある男が集まっているという点以外は)わからないし、浮いてしまうのではないかという不安もあったが、身長が170cmくらい、体重が65キロちょっとという普通体型でもあまり浮いている感じはしなかった。身体を鍛えている人もそこそこいて、ぼくは貧相な方に見えた。

 今日この日のためにすね毛やアンダーヘア、尻の毛を剃ったり、やたら丁寧にひげを剃ったりした。異性に目を付けてもらうためにする努力なんてももう何年もしていないのに、男に目を向けてもらうために身だしなみにやきもきしているのがすごく滑稽だった。

 

そんなことを思い返すうちにしばらく事の成り行きを見ていると、寝転がってる男を物色してくる人がいるのに気づいた。お眼鏡にかなう相手がいたら馬乗りになって顔を近づけたり、ボディタッチしたりして、相手にその気があれば、キスし始めたり、身体や局部を触りあいし始めたりして、最終的には個室に連れ込んでいく。そんな男同士の情事を近くで見ていると、自ずとドキドキしてくる…

 すると、左隣で寝転がっていた男性と目が合った。顔は暗くてよく見えないけど、熱っぽい目線が伝わってくる。身体を鍛えてる感じではなかったけど、体格は僕よりも大きくて、相手としてはイイかも…!と思った。

 ここで一つ豆知識であるが、ゲイの盛り場ではロッカーキーを付ける位置によって自分がネコかタチかリバかを伝える風習があったりする。ぼくは抱かれるつもりで行ってるので、左手(ネコ)にロッカーキーを付けていた。そして相手は…右手(タチ)。来た・・・

 ポジションもマッチしているから、相手の手を握ってみた。すると、相手は顔を近づけてきて、キスが始まる。いきなり舌を絡めた情熱的なキス。キスをしながら局部を愛撫しあう。相手の股間はすでに我慢汁で濡れていて、すごい!(語彙不足)カリも張っていて挿入すると前立腺を刺激して気持ちよさそうだ。ひとしきり触りあうと個室に行こうよと誘われたので「いいよ」と返し、二人で個室に入った。

 個室に入ってからは腕や脚を絡めあって箍が外れたかのように何度も舌を絡めたキスを交わしたり、愛撫しあったりした。ぼくもその気になって、欲しくなってきちゃったのでお尻も…と囁いて菊門をほぐすように促す。すると相手はローションを手になじませると、アナルに指を入れてきた。久しぶりの感覚。「痛くない?」と聞かれたけど、大丈夫だよと返し、愛撫を受ける。ちんちんは触ってないのに射精感が昇ってくる。相手にする返事がいじらしい感じがするなと自分で思った。まるで、彼氏と話してる妹の声みたいなメスっぽい感じ。

 そろそろかなと思い相手のペニスにゴムを付ける。焦って一度逆につけてしまった。気を取り直して、口も使いながらゴムを付けてあげて、ぼくが上になって挿入した。少しぼくの股間から汁が垂れてくるのを感じた。気持ちいい!でも、運動不足のぼくには騎乗位は疲れる。少ししたら、正常位になって相手に動いてもらった。深く挿入されると苦しくてあまり上手とは言えなかったが、それでもエロいねとか気持ちいいよとか言われるのは少しうれしかった。「イっていい?」という相手に「うん」と答えると抽送が速くなって、必死に腰を振り出した。結構苦しくて、相手を思う余裕もなかったけど、相手にだいしゅきホールドしてみる。エロ漫画の女の子になり切っている感じはそれはそれで結構面白い。しばらくすると相手は喘ぎながらぼくの中で果ててしまった。射精しているのがお尻の中でわかると面白いのだけど、よくわからなかった。

 それから相手といちゃいちゃしながら少し休み、恋人繋ぎしながら抱き合う。相手に身体を預けながら背中を子守をする母親のようにとんとんとすると少しだけぼくの中にある母性のようなものが刺激されるのが分かった。二回目を促すようにぼくは相手のペニスを口で含む。初めてのフェラチオだ。シャワーを浴びて小ぎれいにしているのであまりひどい味はしない。ピンサロでクンニはしたことあるけど、それと大差ない。裏筋にキスをしたり、亀頭を口で吸いながら根元を手で刺激したりする。上手いねと言われるのがうれしい。

 二回目はバックでしようと思ったけど、相手がヘタってしまったし、自分も疲れてしまった。しばらくイチャイチャしながら相手の手淫で一回射精して、相手とキスをしながら相手のオナサポをするだけのダラダラした二回戦になってしまった。

 そろそろ帰ろうかなと思い、相手にまたねと言ってキスをして個室を後にしてシャワーを浴びて発展場を後にした。滞在時間は三時間もないくらいだっただろうか。

 

 これがぼくの処女喪失の一部始終である。

 総評すると、男を相手にするのはまるで女の子になり切るようで結構面白いしアナルセックスはヘテロセックスと比べ物にならないくらいの快感を有する。しかしながら、ホモセックスもヘテロのそれと同様にうまい下手があり、相手が自分本位だと苦しくてあまり気持ちよくない。快楽本位に行きたいなら自分から動ける騎乗位が丸い。

 

それなりに楽しいハッテン場であったが、どれだけ求められてもぼくの心にこびりついた虚しさが消え、満たされることはなかった。どうやらこの虚無感は飼いならしていかなければならない類のものであるようだ……

 

ということで、おわり(樋口円香)

次回のろしゅの奇行にご期待ください。