ぼくがお勧めしたくてしょうがないけど、きっと誰も始めてくれなそうな趣味第1位が「パイプ喫煙」である。難しそう、初期費用がかさむなどという理由でビギナーを拒み続けるパイプであるが、これはこれでいいところがたくさんあるのでこのブログで紹介してみようと思う。
パイプのいいところ悪いところを紹介した後で実際に始めるために必要なものとか予算とか、初めての銘柄とかを考えてみたいと思う。
パイプのいいところ悪いところ
〇美味しい
きわめて主観的な考えではあるが、パイプたばこの喫味は紙巻きよりずっといいものである。これは紙が燃える味がしないだとか、紙巻煙草に比べて煙が冷えるからだとかいろいろ理由を付けることはできるが、吸ってみないとわからないと思う。特にラタキアというオリエント葉を燻したたばこを使ったブレンドはパイプでしか味わうことができないものである。葉は正露丸と例えられる臭いがしてこんなの吸って美味いんかと思うのであるが、吸ってみるとコクと甘みのバランスが秀でたうっとりするような風味がする。ラタキアはパイプで吸うと美味しいのに手巻きで吸っても悪いところばかり目立って不味いので不思議なものである。もしもぼくに会う機会があってパイプを体験したいのなら貸すので吸ってみてほしい。
〇喫煙中両手が使えて灰を落とす必要がない
これも地味にメリットである。パイプは銜えていられるのでアクションをあまり求められないゲーム(FPSはできないけどRPGならできる)だとかお絵かきだとかキーボード操作だとかをしながら楽しめる。灰を落とさなくてもいいのがながら作業には最適。雀荘で煙草をふかしながら麻雀をするおじさんはよくいるが、そういう人がパイプを使えば火を付けたり灰を落としたり吸い殻を捨てたりする手間が省けて数半荘吸い続けながら打てる……のであるが実際は滅多に見ないし雀荘でパイプを銜えるとすごい珍しがられる。
△喫煙時間が長い
これはメリットでもあるしデメリットでもある。自宅での余暇時間や作業中ならいいが、立ったままの喫煙所で数分で吸えるものではない。外で吸えるのは遊技中の喫煙が黙認されている雀荘か葉巻を出してるバーやカフェくらいなものである。
一方で紙巻きたばこが0.7g~1gを3分から長くても10分あまりで吸うのに対して、パイプは3gを45分~1時間、長い人だと2時間くらいかけて吸うということを考えるとたばこの量に対して楽しめる時間がすごく長いからお得と考えることができる。パイプが合うかどうかはその人のライフスタイルに最も依存するだろう。
〇コスパは結構いい
上記から、一杯吸うのに紙巻きたばこよりもずっと時間をかけるので時間当たりのコスパはかなりいいといえる。葉そのものは手巻き用の刻みたばこよりも高いが。
△吸うのに道具が必要で手入れしなければならない
当然ながらパイプを吸うにはパイプが要るので火と煙草さえあれば吸える紙巻きたばこにはその手軽さで劣る。一方で、近年は加熱式煙草を吸う人も増えたので、道具が必要で手入れがいるという差はやや縮まっているともいえる。
道具には愛着が湧くもので、パイプも使っているうちに愛着が湧き手入れも楽しくなるかもしれないのでこれもデメリットとは言い切れない。
×初期投資が高い
パイプははっきり言って結構高い。ここが初心者を阻んでいるといっても過言ではないし、パイプは吸うたばこのジャンルに合わせて数本は欲しくなるのでそれも加味するとそこそこの金額をパイプにつぎ込むことになる。
×それでもやっぱり難しい
パイプの喫煙方法は葉の詰め方とか、吸うだけじゃなくて吹かなきゃいけないとか、ちょっとした技術があり、それに慣れるまではろくに吸うことができないし、焦って火を保とうすれば舌をやけどしたり、ひどいとパイプを焦がしてしまったりする。ぼく自身喫煙できるようになるまでに数日は要した。今でも熟練のパイプスモーカーに比べて完璧かと言われればわからない。逆にそこさえ乗り越えられれば……って感じ
パイプを始めてみよう
ここまでパイプのメリットデメリットを語ってきたが、実際パイプを始めたいとなったとき、何が必要でいくらくらいして、初めての銘柄は何にすればいいのかを見てみよう。
必要なもの
・パイプ
・パイプたばこ
・コンパニオン
・掃除用のモール
あると便利なもの
・パイプレスト
・マッチあるいはパイプ用ライター
・リーマー
上から順番に見ていこう
パイプ
これがなければ始まらない。材質はエイジュというツツジの仲間の根を使ったブライヤー、トウモトコシの芯で作ったコーンパイプ、セピオライトという粘土鉱物を使って作ったメシャムなどがある。
値段は概ね
メシャム>ブライヤー>コーン
最初はブライヤーのものを買っておけば間違いない。コーンパイプは1000円ちょっとで手に入るが、他の素材の物が(うまく使えば)一生モノの代物であるのに対してこれは消耗品である。最初はブライヤーを買って、焦がすのが心配ならコーンパイプを買って練習するのがいいだろう。ブライヤーパイプはアンティークやパイプ作家が作った一点ものなど金を出そうとすればキリがないが、最初は6000円~20000円くらいを見込んでおこう。ぼくのパイプは10000円から16000円くらいのものである。1回風俗に行くのを我慢すれば一生楽しめる趣味に出会えるかもしれないのだ。さぁやろう。
巷ではパイプ入門セットと称して4000円くらいで必要なものが一通り揃うセットが売られていたりする。しかし、自身が買ったことがないのでお勧めのしようがない。メーカーは柘製作所という国産パイプの有名メーカーのものなのでそこまで酷いものをつかまされることはないと思うのだが……煙道の空き方が不適切なものを掴まされると最後まで吸いきれないなどストレスも多いから最低限の品質を考えて少しいいモノを買ってもいいかもしれない。
また、パイプにはいろいろな形(シェイプ)のものがあり出ている木目も個体差があるが、これは好きなものを買って構わない。いいなと思った木目や加工の物を買えばいいし、いいなと思ったシェイプのものを買えばいい。強いて言うなら、吸い口がまっすぐ伸びているビリヤード等のシェイプのほうが掃除のときにストレスがなく、曲がっているベントタイプのほうが銜えるのが楽とか、小さな一長一短があるが好きなものを買うことが最優先である。
メーカーはいくつもあるが、先ほど出てきた柘製作所とかフカシロとかが日本のメーカーでは有名どころで、海外の物ではフランスのブッショカン(BC)やデンマークのスタンウェル、アイルランドにあるピーターソンなどがある。
通販であればkagayaなどの喫煙具の通販サイトで、都内であれば銀座の菊水や五反田の野村たばこなどへ行ってみるといい。
パイプたばこ
これもなければ始まらない。価格は50gで1300円から2500円くらいする。基本的に缶に入ってると高くてパウチに入っていると安い。
ブレンドの違いとして
・ラタキア入りのイギリスタイプ
・着香されていないタイプ
・着香されているタイプ
が大きく分けると存在する。ほかにも葉組の違いなどがあるが、割愛する。もしもたばこ屋でパイプたばこを物色している際にラタキアという文字が出てきたら最初のうちは避けておくのが無難だ。パイプに慣れてからラタキアを試してみて好きか嫌いか判断してほしい。これは好みが大きく分かれるところだ。
また、カット方法もいくつかあるが、最初はリベーシックなボンカットのものがいいだろう。フレイクという板状の煙草が入ったものもあるが、リボンカットの詰め方に慣れてからでも遅くない。
これらを含めて一番最初に何を買うか、狭い見識から挙げてみる。特に記載がない場合、50g入っている。価格は2021年7月現在である点を了承いただきたい。
・ダンタバコ「ブルーノート」2300円
バニラとトロピカルフルーツの香りの定番銘柄。バナナみたいな印象を抱く。これが上手に吸えた時、え?たばこってこんなに美味いんか!?ってなる
・マックバレン「ヴァージニアNo.1」1420円
バージニア+ちょっとバーレーの非着香。アメスピとかゴールデンバージニアが好きならこれ。火も付きやすいし、紙巻と比べてどう変わるのか比較しやすい。
・JTアイメックス「桃山」40gで1170円
フルーツラムの香り。着香が強くなく、たばこ本来の味もわかりやすいので、これを吸って着香と非着香どちらが好みかはっきりさせるのもよい。失敗しても40gなのでダメージが少ないのも〇
番外編「慣れたら試してほしい銘柄」
・ラットレー「マーリンフレイク」2450円
バージニア+ブラックキャベンディッシュ+ペリック。独特の塩気とコクのある甘さが魅力的だが、壊滅的に火が付きにくいのが玉に瑕。ながらパイプには向いていない
・ピーターソン「スタンダードミクスチャー」2450円
ラタキアが入っている。最近吸ってみてすごくおいしかったので紹介。ラタキアはそこまで強くないが、独特の甘みとコク、オリエントの出汁感を味わえ、これが好きならラタキアものも行ける!という銘柄。これが好きなら同社の「マイミクスチャー965」や「ナイトキャップ」もおすすめ
その他の道具
・コンパニオン
1000円前後。安ければ500円くらい。吸い終わった後、パイプの灰を搔き出したり詰めた葉っぱがが熱で膨張し、盛り上がってきたときに葉を上から押さえ込んだりするのに使う。これも必須級
・モール
パイプの煙道を掃除するのに使う。50本くらい入って数百円。けちるなら100均の手芸用モールでもいい。
・パイプレスト
パイプは大体自立しないのでこれがあるとトイレに行きたい時など喫煙を中断する際、パイプを安定して置くことができる。1000円前後。
・マッチやライター
火が付けばなんでもいいのだが(ぼくは100円ライターを使うことが多い。)こだわるならマッチやパイプ用ライター(横から火が出る)のほうが火がつけやすい。パイプ用のライターには簡単なコンパニオンがついていることがあり、外出先では便利だ。
・リーマー
パイプは使用を続けるとカーボンと言ってパイプの内側にヤニがたまっていく。少しついている分にはむしろパイプが焦げにくくなるのでいいのだが、つきすぎるとパイプに詰められる内容量が減ってしまうので削ってやる必要がある。リーマーはそのための道具である。コンパニオンで削ってしまっても構わないが、これを使うと均一に削れる。ぼくは持ってない。
とまあこんなものだろう。気が向いたら細かい吸い方など解説してもいいが、結局体で覚えるしかない。興味があったら是非始めてみてほしい。パイプ党が一人でも増えたならうれしい。